2008年01月01日

『線路と娼婦とサッカーボール』で年が明ける

正月休みということで、サンプルビデオに目を通した。『線路と娼婦とサッカーボール』。前にもザラッと観た程度だったのだが、時間ができたので鑑賞。

娼婦たちのサッカーチーム、奮闘記
中米のグアテマラ。リネア(線路)と呼ばれる貧民街が舞台。そこで働く娼婦達がサッカーチームを作って、サッカー協会の試合に出場し、一般的な婦女子のチームと対戦するというドキュメンタリー。彼女たちがチームを作るのは何もサッカーが好きというだけの理由ではない。公式戦に出ることで、自分たちの社会的な権利を主張しようという目的を持っている。たかが売春婦が路上で叫んでも、誰も耳を貸してくれないというわけだ。幸か不幸か彼女達の活躍は多いに話題になる。彼女達と試合をするとAIDSが感染する恐れがあるとして、対戦相手の関係者からクレームが出たのだ。他にも難癖はいろいろ。そもそもAIDS なんてそんな簡単にうつるものではないが、そういうクレームが、最下層の娼婦達ではなく、教養のあるチームの保護者から出てくるところが、彼女達の立場と、社会の構造をあぶりだしている。

人の尊厳は平等に与えられるのか?
映画では当然ながら、チームメンバー一人一人の背景も映し出される。そこには当然ながら家族がいて、普通に子供たちもいる。そんな中で身体をはって日銭を稼ぎ、子供たちの学費まで稼ぐ母たちはたくましく美しい。子供たちはそんな母親を尊敬し、愛しているのが泣かせる。売春は良い仕事ではないし、誰にも勧めないが、それ自体が罪と言いきるのは難しいということが、この映画を観るとよくわかる。これは自らを貶める人々ではなく、最下層からスタートした人々の物語なのである。映画はその辺は問題提起しているが、深く降りていくことはしない。大事なのは彼女達の職業ではなく、人としての尊厳を見せつけることにあるのだ。サッカーというスポーツを通して、誰もがルールの元で対等になれることを証明することが重要なのである。さらに映画は、彼女達の職業を否定している人々が、彼女達のサッカーまでもを否定する矛盾を見せつける。

意外と熱狂できた試合シーン
もちろん映画には何度か試合のシーンも登場する。ハンドボールのコートのような小さなコートで、まるでホームビデオのような映像なのだが、彼女達の日常を見ているだけに、感情移入ができて意外と興奮して見ていた。なんだか運動会に身内を応援しに行ったようなハイな気分になれる。もう映画を観ているうちに、だんだん彼女達の職業がどうでもいい感じになって、ただ単純に応援している自分に、僕を初め多くの観客が気がつくだろう。そしてそれこそがこの映画の目指すべき方向なのだ。必ずしもハッピーエンドとは言えないラストだが、グアテマラの娼婦たちの、人生で一番ハッピーな時間を共有できる。その瞬間をいっしょに味わって欲しい。桜坂劇場での公開は2月末。絶対楽しめるし、元気になれるドキュメンタリーです。

>>『線路と娼婦とサッカーボール』公式サイト
2/23(土)〜 桜坂劇場にて公開


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