2006年12月17日
フランスに行ってきました 03
さて、長い前置きを終えて、いよいよ本題である。e-magicians v2006に参加するため、TGVでパリを通りすぎ、ベルギー国境に近いバレンシアンヌ地方へ。ここは炭坑の街だったらしいのだが、閉山とともに高い失業率に見舞われ、その対策として多くの職業訓練校が作られた。その中の一つがSUPINFOCOM(スパンフコム)と言うCGクリエイターの学校。で、そこが中心になって行なうe-magiciansという催しが、ここで行なわれるのだ。アングレームとは違って、由緒正しい町ではないが、古い地方都市といったおもむき。ホテルのオヤジも気さくでいい感じ。夕方になると、どう見ても泊まり客じゃないオヤジたちが集まってカード遊びをしながらビールを飲んでいる。ほんわかした良い意味で田舎の人の良さがあふれた土地だった。ここにフランス中から若者が集まるのも不思議な感じだった。
e-magiciansはモダンなデザインのLE PHENIXという多目的コンベンション施設で三日間にわたって開催された。フランス中から学生の作品が集められたコンペティションをメインに、優秀な作品のメイキングを解説したり、新しいソフトウェアの説明会、ハリウッドのDREAMWORKSロンドン支社の人が来てアメリカの学生や、DREAMWOAKS PRESENTSの短編作品の上映など、その他にいろんな講演もおこなわれる。おもしろいのは会期中にテーマに沿った作品を制作するWEBJAMというバトルコーナー。運営はしっかりとしているが、参加者の多くが学生とあって、学園祭のノリのウキウキしてくるお祭りである。
またオープニングイベントとして、『キリクと魔女』のミシェル・オセロ監督の新作『Asur et Asmar(アジュールとアズマール)』を、近くのGoumont社のシネコンでデジタル・プロジェクターによって上映。同時に監督によるティーチ・インと、過去の短編作品も上映されたりした。『Asur et Asmar』は、いかにもフランスらしい淡々としながらも美しいアニメーション。これは後にメイキングの説明会も行なわれた。もちろん、デジタル上映も驚くほどハイクオリティ。作品がそもそもデジタル作品なので、相性も良かったのだろう。ミシェル・オセロも気さくな人で楽しかった。
コンペティション部門は3プログラムで、全部で40~50本近い作品。バリバリの3Dグラフィックスから、2Dの手書き風アニメーションまでいろいろ。中には意味不明のものもあったが、たいていはテーマもしっかりしていておもしろい。別に社会的なテーマと言う意味ではなく。さりげない場面でも、キャラクターの感情表現などがしっかりしていて、CGにありがちな“動きの派手さ"に頼らないおもしろさがある。つまり伝えたいものを伝えているのだ。技術レベルの高さは当たり前で、そこに何を描くかが問題。僕も台湾で若いスタッフとアニメを作っていた時に良く問いかけたことだけど、「君たちはアーティストになりたいのか、オペレーターになりたいのか?」ということことに対して、しっかりと「アーティストです」と答えてもらったような感じだった。そもそも語るべき事がない人はアーティストに向かないのだから。
最終日は授賞式。コンペティションのグランプリ他、様々な賞の発表。WEBJAMの作品は完成品の披露。こちらは引き続きWEB上で審査が続く。それにしても、ここの学生はすぐに紙飛行機を飛ばす。カンファレンスの最中でも飛んでいるのだが、授賞式となれば乱舞状態。どっかから持ってきた風船も飛ぶ。変な色の細長い風船だと思ったら膨らましたコンドームもだったりするから油断ならない。
受賞式は3時間も続き、グランプリが発表されるころには、ややおとなしくなっているものの、すでにステージ上は紙飛行機で真っ白になっているという楽しい状況。先生たちもうるさく注意する事もなく、むしろ煽って楽しんでいる。グランプリに選ばれたのは、『BLOOD FLOWER』とい、ややゴスっぽいダークなイメージのアニメだった。正直あまりおもしろくはないのだが、印象は後を引く。女性の作った流血ものってだけで、ちょっと男性にはきついかも。そんなこんなでフランスのCG映像の最前線を後にする。 2006年12月17日
フランスに行ってきました 02
夕方アングレームに到着。ここは歴史のある古い街。丘の上に旧市街があり、下の方に行くほど新しい街。下から旧市街を見上げると、『ロード・オブ・ザ・リング』に出た城壁都市といったおもむきがある。道も迷路のように入り組んでいて、外からの攻撃を惑わせる作りになっているようだ。この日は旧市街のホテルに変更。これがまた『シャイニング』の双子の幽霊が出てきそうな廊下のホテルで、ボロさと風格が渾然一体となっている素敵なホテルでした。
"作家の家"は、アングレームの街並に溶け込むように、というかもともと建っている建築物を利用した施設。小さな看板を見逃すと気がつかない。ここは日本的に言うと、昨今流行のシェア・オフィスのような感じで、テーブルごと、ブースごとに個人が借りて使用している。ただし、申し込めば誰でも使えるわけではなく、企画を申請して、それが通った人に無償で場所と機材を化し出す。だから金はないが企画を実現したいと考える若者たちの作業場にはもってこい。借りたアパートのように好きな事をするために借りるわけではないのがミソ。つまり、ここは個人が作業場として使うと言うよりも、ある企画のために利用する場所なのだ。
作業テーブル、ライトテーブル、パソコンなど、コミックやアニメーションに必要最低限のスペースと機材がおかれた整然として、ゆったりとした環境が用意されている。外国の建物は天井が高いので、床面積が狭くてもゆったり感じるのだ。若い作家たちは、ここで意見交換などもしながら、ゆったりと作品を作り続けている。県内にもインキュベート施設は数々あるが、仕事用の貸し出しスペースと、不特定多数の人が使うコンピュータ室のような教室しかみたことがないのだが、何か企画の募集みたいな形で作品プロデュースをしていったらおもしろいと思うのだが。
ここの使用期間は、3ヶ月から、最大4年使った人もいる。もちろん長期の企画は、途中で進行状態をチェックしていく審査も用意している。単純に施設を貸すだけではなく、着実に作品を生み出し続けるシステムができ上がっている。仕事場を探している若者には非常にありがたい施設だし、施設としても結果を出し続ける事ができる。
作家の家から歩いて数分のところに、これまた古い建築物を利用したバンド・デシネ博物館がある。古い建築とは言え、外装をガラス張りの近代的な建築で覆っていて非常にユニーク。バンド・デシネとはフランス風コミックのことだ。ざっと観た感じ、アメコミよりも大人向け。本もガッチリとした製本で値段も高い。大人の買う絵本というイメージがある。この博物館は、展示を中心に図書館と本屋、イベント的なギャラリーがある。展示はバンド・デ・シネの歴史。吹き出しのバリエーションらしく、ガラスケースに切り抜いた吹き出しが並べられているなど洒落っ気もあってけっこう楽しい。
壁などもコミックの書き割り風に作っていて、ユニークだ。図書館には日本のMANGAもフランス語版が多数おいてあった。書店コーナーで2冊ほど気になる本を購入。3,000円くらいでけっこう値がはる。中央集権国家のフランスでは、地方で出版産業が盛り上がる事はなさそうであるが、この町はある種、コミックの殿堂として風格を保っているように思えた。 2006年12月17日
フランスに行ってきました 01
12月の3日から、14日まで、ちょっとフランスへ行ってきました。記録の意味でも、日記をアップしておきます。フランス行きの目的は三つ。北フランスのバレンシアンヌでおこなわれるCGアニメを学ぶ学生たちの祭典、e-magicians v2006に参加する事。次の理由は、フランス中央部にあるアングレームという街の“作家の家”を訪ねること。アングレームはバンド・デシネやアニメーションで町興しを行なった古い街。“作家の家”とは産官学が共同で運営している施設で、若い作家に部屋と機材を貸し出して支援を行なう場所。そして最後にパリ見物である。せっかく来たのだ。それに街を観るのはそこに住む人のメンタルな部分を知る最良の方法だと思っている。フランスを知るためにもひたすら歩き続けるのが目的。ちなみにこの旅に備えて日本で用意したのは二つだけだ。新しい靴と方位磁石。山にでも行くのかと笑われた。
そんなこんなの長いフライトを経て到着した、パリの初日は夜だった。ホテルに着いたのはまだ午後8時なのに、同室の連中はもうすでにお休み。真っ暗なまま。そう宿代をけちってユースにしたのだ。外で晩飯を食べて、宿に帰っても寝るしかできない。翌朝は早朝出発なので、けっきょく部屋の明かるい状態を知らないままにユースを後にする。もうユースはコリゴリだ。でも、なかなか味のある建物で、階段が二股になっていたりして、日本人では思いつきそうにもない有機的なデタラメデザインに感動する。
そして翌朝、駅からTGVに乗って南へ。アングレームに向かう途中でFUTUROSCOPE(フチュロスコープ)というテーマパークへ立ち寄る。未来都市のイメージしたテーマパーク。基本的にどのパピリオンもIMAXシアターだ。そのとき日本とメールのやり取りをする必要があったので、あちこち探すがどこからもメールを送る事はできない。しまいには事務所らしきところに突入し、頼み込んでGmaiでメールを送らせてもらう。フランス人は意外に優しい。但し、なぜかそのメールは届いてなかった事が後から判明する。その後いくつかの映像施設を堪能。単純だがやはりでかい画面で映画を観るのは楽しい。リュミエール兄弟の『列車の到着』など、映画の草創期には、電車が駅に入ってくる映像を見て、観客が逃げ惑ったらしいが、映像作品の本質ってのはやはり《動いているのがおもしろい》ってことだ。 


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